実践!個人心理学(入門)

ライフスタイルの再選択:聞こえてくる2つの誘惑

 

 

『この世界をどんなところだと考えるか?』
『この世界をどんな風に定義するのか?』

 

あなたや私、一人一人がもっている『世界観・価値観』のことを
アドラーは『個人心理学』の中で『ライフスタイル』と定義しました。

 

『ライフスタイル』とは、『色眼鏡』のようなもので、
『この世界はこんなところだ!』と思って世界の事を眺めていると、
実際に世界がそんな風に見えてくるようになります。

 

例えば、あなたが道を歩いている時、
前からやって来た男の人が笑顔で、
『おはようございます!』と声を掛けてきたとします。

 

『この世界は、素晴らしい。みんな繋がって生きているんだ』
というライフスタイルを持っている人は、
男の人が挨拶してくれたことに対して、
『ああ、知らない人とでも挨拶を交わし合うって、素敵。』
『本当に世界は素晴らしいところだわ』と思います。

 

ところが、
『この世界は、信用ならない。みんなは私の敵なのよ!』
というライフスタイルを持っている人は、
男の人が挨拶してくれたことに対して、
『うわっ!知らない私に声かけてくるなんて、なんて図々しい!』
『こんな人信じちゃだめ!絶対怪しい!』と思います。

 

 

 

 

 

『前からやって来た男の人が笑顔で挨拶をしてきた』
という事実は同じなのに、
あなたがかけている色眼鏡(ライフスタイル)が違うだけで、
世界の解釈がこんなにも変わってくるのです。

 

 

このことから、アドラーは
『あなたを取り囲む現実が気に入らないなら、
あなたが付けている色眼鏡であるライフスタイルを変えなければならない』
と考えました。

 

そして、ライフスタイルとは
自分が『今、この瞬間』に選択しているものであり、
自分の意思でライフスタイルを再選択しなければならないと主張したのです。

 

 

ここまでがアドラーが提唱した『ライフスタイル』の概要になるのですが、
理解は大丈夫でしょうか?

 

 

『現実を変えたいと思うならば、ライフスタイルを再選択すれば良い』

 

アドラーが私たちに教えてくれるこの考え方は、
『なるほど!』と理解できるのですが、
実際にライフスタイルを再選択しようとすると、
なかなかうまくいかないことも多いのも事実です。

 

そこで、今回は、
『なぜライフスタイルを再選択することが難しいのか?』、
『私たちはどんな風に考えなければならないのか』
についてのフレームワークをご紹介したいと思います。

 

ライフスタイルを再選択する時に登場する”壁”の正体を知れば、
きっとあなたはそれを乗り越えられるはずです!

 

 

もし〇〇だったら、ライフスタイルも変えられるのに!?

 

先程も言いましたが、
『あっ!ライフスタイルを変えれば世界が変わるんだね!OK! よーし、やってみるぞー!』
とお手軽にライフスタイルを再選択できれば、何の苦労もありません。

 

なぜなら、あなたも私も知らず知らずのうちに、
ライフスタイルを変えることに心理的な抵抗を感じたり、
なぜか無意識のうちに昔のライフスタイルを再選択してしまったりするからです。

 

なぜこんなことが起こるのだと思いますか?

 

 

実は、これには明確な理由があります。

 

 

『人間は嘘つきばっかりで信じることが出来きない』
というライフスタイルよりも、
『人は信じるほどに絆を深め合える存在なんだ』
というライフスタイルの方が良いですよね?

 

『限られた人だけが成功を収めることが出来て、自分みたいな人間はみじめな生活しか送れない』
というライフスタイルよりは、
『皆がみんな、それぞれの才能を持っていて、自分の才能を活かしてより素晴らしい世界を作っていける』
というライフスタイルの方が良いですよね?

 

それが頭では分かっている。
それでもライフスタイルを変えることが出来ないのには、理由があるのです。

 

 

その理由は・・・
ライフスタイルを変えないことが、あなたにとっての『最善』だからです。
もうちょっと分かりやすく言うと、
ライフスタイルを変えないことに、あなたが『メリット』を感じているということです。

 

そして、それはどんな『メリット(最善)』なのかと言うと・・・
具体的には『安全』『希望』の2種類があります。

 

 

ライフスタイルを変えないことで手に入れられるもの:@『安全』

 

あなたが古いライフスタイルにしがみつくと、
あなたの人生には何の変化も起きません。
今まで通りの『過去』と同じ『未来』があなたを待っています。

 

それを頭で理解すると
『マジ!?そんなの、嫌なんだけど!』と思ってしまいますが、
一方であなたの心は、
『やったー!変化がないなら、今まで通り想定の範囲内で生きていけるぞ!安心だ!』
と喜んでいます。

 

その結果、頭では『今のままじゃ嫌だ!変わりたい!』と考えながらも、
居心地の悪い現状に『安心感』を覚えるという状況が生まれてしまい、
いつまでも現状は変わらないままになってしまいます。

 

 

 

これがライフスタイルを変えないことがもたらしてくれる『メリット』の1つ『安全』です。

 

ライフスタイルを変えないことで手に入れられるもの:A『希望』

 

次に、『希望』とは何でしょうか?

 

実は、あなたが古いライフスタイルにしがみつく時、
あなたは妄想の世界に浸ることが出来ます。

 

『人間が嘘つきではなく、信じあえる存在だったならなぁ・・・』
『誰でも平等に才能を発揮できる世の中だったらなぁ・・・』

 

 

こんな風に考えることで、あなたは妄想の世界に逃げ込み、現実から目をそらし、
『可能性の世界』の中で生きることが出来るようになります。
いわば、古いライフスタイルを隠れ蓑にして、
現実を変える努力をしないことを正当化しているのです。

 

 

 

『可能性の世界』という妄想の中では、
あなたは傷つくことなく、完璧な存在であることが出来ます。
そこは素晴らしく居心地が良いのですが、早く抜け出さなければなりません!

 

 

ちなみに、私は長らく『可能性の世界』の住人でした。
中学生〜社会人までは、だいぶ入り浸らせて頂きました(汗)

 

『まだ、本気になっていないだけ!もし、私が、本気を出したら・・・』
『私がやろうと決意すれば、どんなことだって出来る!やろうと思うことがないだけで・・・』

 

そんなことをよく考えていました・・・。
可能性の世界に逃げ込んで、
『本当の私はこんなもんじゃない!』と強がっていましたが、
今、考え直してみれば、単に現実世界の中で、傷つきながら生きていくことを怖がっていたのだと思います。

 

 

少し話がそれてしまいましたが・・・
これがライフスタイルを変えないことがもたらしてくれる『メリット』の2つめ『希望』です。

 

 

あなたが手にする『安全』と『希望』は・・・

でも、古いライスタイルにしがみつくことで得られる『安全』と『希望』は、
本当にあなたにとっての『最善・メリット』なのでしょうか??

 

現状に甘んじて希望に満ち溢れた妄想の世界で、
言い訳をすることがあなたにとっての『幸せ』なのでしょうか?

 

 

アドラーは、ライフスタイルを再選択する『勇気』を持っている人だけが、
現実を変えることが出来き、本当の幸せを掴むことが出来ると考えていました。

 

あなたや私が今持っている『ライフスタイル』を変えたいならば、
常にこの『安全』と『希望』の誘惑に打ち勝たなければならないのです。

 

 

『安全』と『希望』という名の誘惑は言葉巧みにあなたに話しかけます。

 

『どうせ、世の中なんて変わらないよ』
『ねぇねぇ、新しいことを始めるのにビビってるんでしょ?今のままでいようよ!』
『これでもし失敗したら、その責任は君が取らなきゃいけないよ!?それでもいいの?』

 

そんな言葉に惑わされることなく、
『自分は今の現状を変えるんだ』という決意を持ち続ける
『勇気』があるかどうかが試されるのです。

 

 

 

 

そして、そんな声が聞こえてきた時こそ、
『ああ、ついに私はライフスタイルを変えようとする最終段階に来たんだな。』、
『だから、心が最後の抵抗をしようとしているんだ。』
とあなたの自身の心の動きをしっかりと理解することが出来れば、
実際にライフスタイルを再選択する際の心理的な障害は小さなものとなります。

 

与えられたものに注目しても、何も変わらない

 

アドラーのモットーは、
『何が与えられているかではなく、与えられたものをどう使うかが大切だ』でした。

 

これは、
『与えられたものにどんなに注目ししても、何も現実は変わらない。』、
『与えられたものを活用し現状を切り開く態度こそが、真に現実を変えることができるのだ』という意味で、
アドラーはことあるごとに、この言葉を話しています。

 

先程の例でも出しましたが、
『もし、〇〇だったら、△△なのになぁ』という言葉を話すとき、
あなたは、『与えられたもの』に注目し、それを評価し、悔やんでいることになります。

 

 

自分の持っているライフスタイルや現実に対して、そんな態度でいる限り現実は変わりません。

 

『もし、〇〇だったら・・・』と話すくらいなら、
『与えられている状況の中で、今の自分にできる最大限のことはなんだろうか?』
と考え、行動に移さなければならないのです。

 

 

『ライフスタイル』とそれに伴ってあなたにもたらされる『現実』を選ぶ権利は、『あなた』にあります。
つまり、『あなた』が主導権を握っているのです。

 

そして、『あなた』に主導権があるということは、
今の現実はあなたの『責任』で作り上げているのだとも言えます。

 

このことをアドラーは以下のような言葉で語っています。

 

 

これまでの人生で起こったことは、あなたの今後に何の影響を及ぼさない。

 

『ライフスタイル』を選択する主導権は、『あなた』にある。
『ライフスタイル』を変化させて、『現実』を変えていく主導権も『あなた』にある。

 

そこまで理解でき、
いざライフスタイルを変化させて新しい自分の生き方を始めようとしても、
それでも心のどこかで、
『今までの人生を振り返ってみてよ!本当にそんな生き方出来ると思うの?』
『今までだって、そうやって努力しては上手くいかなくて、傷ついてきたじゃない!』
『今のままでいようよ。確かに大きな喜びはないけど、大きな失敗もない毎日が約束されているんだよ!』
という声が聞こえてくるかもしれません。

 

これは、あなたの心が『安全』を手放すのを拒んで、最後の抵抗をしている瞬間でもあります。

 

この時、あなたの心は、特に『過去の経験や感情』を持ち出して来て、
『今のままで良いじゃない!ねっ、変わるの止めとこーよ!』とグイグイ説得してきます

 

 

心の声はあまりにも言葉巧みなので、思わずその声に耳を傾けて、
『うーん、確かに、それも一理あるなぁ。やっぱりやめた方が良いのかなぁ』
なんて思ってしまう事もあるかもしれません。

 

そんなときは、ライフスタイルの本質を思い出してください!

 

ライフスタイルとは、毎瞬毎瞬、あなたが選択しているものです。
あなたが『今』、選択するものなので、
あなたが『昔』にどんな経験をしたのか、
今までどうやって生きてきたのか等はまったく関係がないのです。

 

あなたの心はそれが分かっているので、
あなたが視点を現在に向けるのを阻止するために、
あえて過去の出来事を持ち出して来て、あなたを誘惑・説得しようとしているのです・・・(怖)

 

 

もし、あなたが昔の出来事を持ち出して来て、
『ライフスタイルが変えられない!!』と悩んでいるとするならば、
それは単に過去を言い訳にして、ライフスタイルを変化させることから逃げているだけです。

 

 

『ライフスタイルを再選択して、新しい現実を作りたい!』
あなたがそう思った瞬間から、そのライフスタイルをあなたのモノとしていいのです。
そして、そのライフスタイルを通して現実を作っていって良いのです。

 

 

『今までの人生がどんなものであったか、どれほどヒドイ出来事で満ちていたか・・・
それは、あなたのこれからの人生に全く関係ない!
あなたが、これからどんな人生を創ろうとしているのかだけが、あなたの今後の人生に影響を及ぼしているのだ。』

 

個人心理学を通じて、アドラーは私たちにそう語り掛けてくれています。

 

 

『私の人生なんて、たいしたことないよ・・・。』
『むしろ、泣きたくなるくらいにネガティブな事でいっぱいな人生だった・・・。』

 

もし、あなたがそのように自分の人生の事を考えていたとしても、
自分の人生に誇りを持てなかったとしても、
その人生をこれから死ぬまで続けてく必要はありません。

 

 

あなたのこれからの人生は、『今、この瞬間』から再スタートしていいのです!

 

 

これは私にとってとっても勇気づけられるアドラーからのメッセージでした。
あなたにとって、この言葉はどんなふうに響くでしょうか?

 

 

 

『誘惑』の2つの声を正体を知れば、あなたは冷静に対処できる!

 

今回は、『ライフスタイルを再選択する際にあなたが出会うであろう心理的な罠』をご紹介しました。
あなたがライフスタイルを選択するとき、
なからず何らかの形で『安心』と『希望』はあなたの変化を止めようとします。

 

しかし、事前に
『きっと、私の決意に対して”安全”や”希望”が私のことを止めようとするだろうな』
と知っておくだけで、
実際に心理的な抵抗に出会っても冷静に対処することが出来るようになります!

 

むしろ、心理的な抵抗を目の前にして、
『ああ、これが心からの最後通告なんだ。』、
『ここを越えれば、本当の意味で私は、ライフスタイルを変化させることができるんだ!!』
とワクワクすることが出来るようになるかもしれませんね!

 

当ページの内容が、
少しでもあなたが個人心理学・アドラーの教えを理解するのに役立てばうれしいです。
理解するのは簡単だけど、実践するには、あなたの『勇気』が試されるアドラーの教え。
私もあなたと一緒に少しづつ学びを深めながら、
アドラーの教えを身につけていきたいなと思っています。

 

 

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