アドラーはトラウマを認めない

アドラーはトラウマを認めない

 

私たちは、なにか問題・悩み・課題に出くわすと、

 

『はぁ〜、大好きな彼に振られたショックで、やけ食いが止まらない・・・。』、
『私って、人見知りだから・・・みんなと仲良くしたくても、一歩が踏み出せない。』、
『恋人がもうちょっと私に優しくしてくれたら、私もイライラしなくて済むのに!』、

 

『あ〜!〇〇のせいで、△△だ』という考え方をしますよね?

 

この『我々はみな、何かしらの”原因”があって、今の状況がある』という考え方を『原因論』と言います。
これは、精神科医で心理学の大家であるジークムント・フロイトによって提唱された考え方です。

 

 

これに対して、『個人心理学』の中でアルフレッド・アドラーは、
『我々はみな、何かしらの”目的”があって、今の状況を作りだしている』という『目的論』という考え方を提唱しました。

 

 

 

 

『個人心理学』は対人関係の中から幸福を得るための心理学です。

 

個人心理学において、この『目的論』のフレームワークは、
『課題の分離』と並んで、対人関係におけるあなたのあり方(態度)を劇的に一変させるほどの
効果があるものだと私は感じています。

 

それだけに世間で出回っているアドラー心理学の関連本では、
この『課題の分離』、『目的論』に特に焦点を当てて作られていたりするほどです。

 

 

今回は、この『目的論』の理解をさらに進めるために、
『私たちが抱える問題を目的論の視点から捉えるとどう見えるのか?』
についてご紹介したいと思います。

 

『目的論』のフレームワークを身につけることは、あなたに新しい世界の見方を与えてくれるはずです!

 

アドラーはトラウマを認めない

先程も紹介しましたが、『原因論』に慣れ親しんでいる私たちは、
『〇〇という過去があるから、△△という現在の状況があるんだ』という考えをしがちです。

 

この最たる例が、トラウマです。

 

PTSD(心的外傷後ストレス障害)のような深刻な状況でなくても、私たちは日常的に
『昔、仲間外れにされた経験がトラウマになって、人と積極的にお付き合いできなくて・・・。』
のようにトラウマという言葉を使います。

 

 

しかし、アドラーは『トラウマは存在しない』と考えます。

 

トラウマがあるのではなくて、
『あなたが過去の出来事を自分の今の状況と関連があるように考えているだけだ』と説明します。

 

 

この『過去の出来事が今の状況と関連があるように考える』ことを
アドラーは、『見かけの因果律』と呼びました。

 

『見かけ』・・・つまり、そこには因果律(関連性)はないと指摘したのです。

 

 

そんな風にアドラーに否定されちゃうと、
『でも、実際に仲間外れにされた記憶がよみがえって、人と付き合うのが怖いんだよ!』と反論したくなりませんか!?

 

 

この反撃に対して、アドラーなら
『記憶(トラウマ)がよみがえるのではありません。あなたが、その記憶を必要とした時に、よみがえらせているのです。』
と答えるでしょう。

 

 

例えば、この『仲間はずれの記憶→人付き合いが怖い』というケースであれば、
あなたには、最初に『心を傷つけられたくない』、『心理的なストレスを抱えたくない』などの『目的』があり、
そのため『人付き合いをしたくない』と考えているということです。
(あなたが心の奥で、そのことに気付いているかどうかは分かりませんが)

 

 

理由はどうであれ、要するに、あなたは対人関係に一歩踏み出すことに勇気が持てないでいるということです。

 

 

ただ、いきなり、なんの脈絡もなしに
『私、人付き合いをしたくないですー!!』なんて言い出すことは出来ないし、
『私、対人関係を作る勇気がないんですー!』と告白する訳にもいかないので、
現在の自分の行いや考えを正当化する必要が出てきます。

 

そこで、『昔、仲間外れにされた』という過去の事実を持ち出して来て、
その事実に『仲間外れにされたから、対人関係に踏み出すのが怖い』という意味付けを行い、
あなたの行い・考えを正当化する理由(トラウマ)にしているのです。

 

 

 

このように、アドラーは、
『トラウマというものは存在しない。』、
『経験の中から目的に合ったモノを選びだしている』、
『人間は、起こった経験ではなく、経験に与える意味によって”今”を定義している』
という考えから、トラウマの存在を否定したのです。

 

あなたにとって有益なら、不都合な事も選択してしまう

 

『あなたには、明確な目的があり、その目的を達成するために現在の状況を作りだしている』
という『目的論』の考え方は、
『原因論』に慣れ親しんでいる私たちには、ちょっと刺激の強い物ではないでしょうか?

 

私自身、『目的論』の考え方を理解するのには時間がかかりましたし、その考え方にショックを受けました。

 

あなたのここまでの理解は大丈夫でしょうか?

 

 

さて、『目的論』で物事を考えてみると、面白いことに気づかされます。

 

それは、
『たとえ不利益を生じる場面であっても、それが目的に沿ったものであるなら、人はそれを選択する』
という事実です。

 

 

先程の『仲間はずれされた経験のある人が人付き合いが出来ない』ケースをもう一度考えてみましょう。

 

この場合、あなたには『人付き合いが出来ない』という不都合が生じています。
そして、あなたは『人付き合いが出来るようになりたい!!』と悩んでいます。

 

本来ならば、
「友達を作る努力をする」、
「会社の同僚とご飯に行くってみる」、
「学校の友人と連絡を取ってみる」
など、この不都合・悩みをなんとかして解消しようとするでしょう。

 

しかし、あなたはそれをしようとしません。
なぜならば、『人付き合いが出来ない』という不都合よりも、
『人付き合いが出来ない』ということでもたらされる利益(メリット)の方が大きいとあなたが感じているからです。

 

つまり、あなたの『目的』が達成されているのです。

 

 

 

 

アドラーは、この『利益(メリット)』のことを『善』という言葉で表現しています。

 

 

アドラー研究の第一人者である岸見一郎氏は、
この客観的に見ると利益のないことでも、本人にとって『善』なら、それを選択してしまうことを
『自分の事を好きになれない人』を例えにして紹介しています。

 

私には、この例えが『それって、まさに私の事じゃん!?ズッキーン!!』と心に突き刺さったので、
あなたにも紹介したいと思います。

 

 

もし、あなたが
『私は自分の事が好きになれない・・・。だって、私には〇〇な短所や△△という欠点がある。』、
『なにより、私は人と違って□□だし。』
なんて考えているとします。

 

この『私、自分の事好きになれない!』という感情にまみれているとき、
そう言っているあなた自身はかなり悲しい思いをしていることでしょう。

 

周りの人は、そんなあなたを見て、
『そんな風に考えることないよ。もっと自分のことを好きになって良いんだよ。』
とアドバイスしてくれます。

 

でも、あなたからすれば
『そんなこと、自分が一番分かってるよ!』と心では思っています。

 

そして、頭の中では、
『私だって、自分の事を好きになった方が毎日が楽しいことはよく分かってる!』、
『だから、自分の事を好きになりたい!』、
『でも、自分の好きな所は見つからなくて、嫌いな所ばかり目が行くのよ!』、
という思考がグルグルと回ってしまい・・・
結局、自己嫌悪に陥ってしまうというパターンにはまってしまいます。

 

 

アドラーが指摘した通りに、岸見氏もこの『自分の事を好きになれない』状況は、
確かにあなたにとって不都合ではあるが、
あなたにとっての『善』だから、その状況を続けているのだと解説されています。

 

 

例えば、『自分の事を好きになれない』ことを理由にすれば・・・、

 

『ダイエットを始めること』
『素敵な恋人を探すこと』
『失敗するかもしれないけど、やってみたかった夢に取り組むこと』
『自分のやりたかった仕事をはじめる事』
『本当は住みたい場所に住み始める事』・・・etc

 

から、あなたは逃げ出すことができるようになります。
(少なくとも、自分の中で逃げ出すことへの正当化が図りやすくなります)

 

この『チャレンジすることから逃げ出すことができる』ことが、あなたにとっての『善』なのです。

 

 

でも、このように説明されると、
『そうは言っても、自分の短所ばかり見つかるんですよ!!』、
『そんな状況でどうやって、自分のことを好きになれっていうんですか!?』
と思いませんか?

 

アドラーの考えに基づいて、岸見氏はこの疑問に対して、
『短所ばかりに目が行くのは、「自分のことを好きにならないでおこう」と決めているからだ』と説明されています。

 

 

つまり、はじめに、あなたの中に『自分の事を好きにならないでおこう』という信念があるので、
その信念を強化するための情報ばかりが集まってきてしまうということです。

 

 

これは、心理学で説明すれば、
「自分が意識していることほど、それに関係する情報が自分のところに舞い込んでくる」という現象で、
『カラーバス効果』と呼ばれています。

 

 

整理すると、

 

『嫌いな所が見つかる』→『自分の事が好きになれない』のではなく、

 

『自分の事を好きになりたくない(善)』『嫌いな所が見つかる』『自分の事が好きになれない』

 

という構造になっているという事です。

 

 

 

アドラーはこのことに関して、以下のような言葉を残しています。

 

 

 

『私には、短所しかない!』と考えて、泣きたくなる気持ちは私にはよくわかります。

 

でも、短所が目につくのは、
自分の『自分の事を好きにならないでおこう』という決断から始まっているのなら、

 

『私は、今の私から始めるかしかない。』、
『今のままの私で、認めてあげることができるところは何なんだろう?』

 

と発想を切り替えて、『自分の事を好きになる』一歩を踏み出すしかありません。

 

 

そして、あなた自身にはどんな『善』があって、
その『善』がどう作用してあなたに不都合をもたらしているのかを認識する事も、
『自分の事を好きになる』第一歩としては有効だと私は思います。

 

 

今回は、『私たちが抱える問題を目的論の視点から捉えるとどう見えるのか?』
についてアドラーとアドラー研究の第一人者岸見一郎氏の教えをご紹介しました!

 

アドラーの考えた『目的論』のことを理解し、
あなた自身の問題・悩みを『目的論』の観点から解釈することが出来そうでしょうか?

 

当ページの内容が、少しでもあなたが個人心理学・アドラーの教えを理解するのに役立てばうれしいです。
理解するのは簡単だけど、実践するには、あなたの『勇気』が試されるアドラーの教え。
私もあなたと一緒に少しづつ学びを深めながら、アドラーの教えを身につけていきたいなと思っています。

 

 

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